情報感度の高い、成熟した生活者とのコミュニケーションに求められること

2013/6/11

「次の広告のトレンドは何ですか?」という質問を、年中耳にします。

スピードが重視される業界においては、次のトレンドをいち早くキャッチし、同業他社に先んじてサービス化することは、大きなビジネスチャンスにつながります。
競争の激化する広告業界にあっては、スピードの重要性を重々認識しながらも、一旦立ち止まって現在の我々の立ち位置を確認するということも大切なのではないかと思います。
現在我々が提供しているコミュニケーション手法を、様々な角度から考察することで、「クライアントと生活者との最適なコミュニケーションが何であるか?」を整理することは、時として最優先されるべき業務となります。
なぜなら、生活者とのコミュニケーションにおいてはスピードよりも質が優先すべきだからです。

現在のコミュニケーションの形態を、私なりに整理する上で、少し時間をさかのぼって、昔話からはじめさせていただきます。
まだ生活者とのタッチポイントが看板やポスターだけであった時代、コミュニケーション可能な範囲は、当該エリアの商圏で生活する人々に限定されていました。
以上のようなコミュニケーションを、ここでは「点としてのコミュニケーション」と定義します。

新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったメディアの登場以降、日本全国はもちろんのこと、全世界のマーケットに向けた発信ができるようになりました。地域という限定した制約を受けずに生活者とコミュニケーションをとることができるようになったのです。
メディアの登場以降をここでは、「線としてのコミュニケーション」と定義します。

つづく、インターネットの登場は、オープンな場で容易に企業と生活者が直接コミュニケーションをとれる時代になりました。また、企業のメッセージを生活者が代弁してくれることにより、多様な広がりが可能となったコミュニケーションが可能となりました。
「面としてのコミュニケーション」の時代です。

点から線へ 線から面へ

では、現在はどうか?

ソーシャルメディアが生活インフラて以降、生活者のパーソナルデータや、欲求を立体的に捉えたコミュニケーションが主流となりつつあります。
これは、「体としてのコミュニケーション」といえます。
体として存在する生活者や、その集合体である市場に対して、前時代の線や面のコミュニケーションをしたとしても、ニーズそのものを捉えることはできません。
マズローの自己実現理論が活用されて久しいですが、それは個人の欲求について立体的な捉え方をすることで、市場そのものを立体的に捉えようとするアプローチのひとつだと考えます。
最近注目されている「承認欲求」は、マズローの欲求5段階のひとつである、自尊の欲求が顕在化している、ひとつの事象と捉えることもできるのではないでしょうか?

マズローの欲求5段階説

生活者のひとりひとりが、より高い次元の欲求を達成することを望いる現在、我々は生活者のインサイトを無視して大きな成功をつかむことは期待できません。

ここで大事なことは、今後の生活者とのコミュニケーションには、より戦略性が重要になるということです。
情報感度の高い生活者を相手にしてコミュニケーションをするという認識を持つことが必要です。
生活者の個人的な生理的欲求を満たすことだけを目的にすべきか?
それとも生活者が考えるよりよき社会の実現を応援するか?
コミュニケーションの目的によって言語表現・広告手法・コンテンツなどそれぞれ大きく変わってきます。

高い段階の欲求を喚起させる又は欲求を満たそうとすればするほど、クリエイティブやゲーミフィケーションが重要になっていくでしょう。
ここで言う、ゲーミフィケーションとは、ゲームの面白さクオリティの高さを表した言葉ではありません。
噛み砕いて説明するならば、「生活者が参加したくなるような、解決可能と考えられる問題」を設定することです。

マズローの欲求5段階にあるような、自己実現の欲求を達成させるための問題から、社会問題を解決するための内容まで設定は自由です。
大切なのは、生活者のモチベーション維持のためにも、「役割の設定」と「報酬の設定」をきちんとすることです。コミュニケーションを目的としたキャンペーンでは、報酬(インセンティブ)ばかりが重視されますが、参加者の役割をきちんと設定し、それに「やりがい」を感じてもらうことの方が今後は重要です。
継続可能なコミュニケーションを戦略立てて実施することの重要性が増すと考えるのは、以上のような理由からです。

マーケティングとは、別の言い方をすれば、市場とのコミュニケーションです。
手法ありきのコミュニケーション論に陥ることなく、真の目的を見失わないことが大切です。
「生活者が求める真の価値は何か?」ということが真剣に語られることが当たり前になった昨今、マーケッターやプランナーのコミュニケーション能力の真価が問われる時代になったと思います。

最後に有名なドラッカーの言葉で締めくくりたいと思います。

真のマーケティングは、顧客から出発する。すなわち人間、現実、欲求、価値から出発する。
『経営者の条件』  ダイヤモンド社刊 ドラッカー名著集の新訳より

 

photo

ライター:斎藤 亮一


コミュニケーション戦略のプランナー。
ネット専業代理店、PR会社を経て2013年より、株式会社GMO NIKKO株式会社に入社
プロモーションの設計、プロジェクト全体の統括が主な業務範囲。
ネット・リアル問わず、最適なコミュニケーション設計を行います。
めまぐるしく変化する、生活者のライフスタイルに対応すべく、世情の傾聴と観察をおくる日々。

Contents

ico人気記事