アドテック東京 2017(後編)2日目のカンファレンス

2017/10/30

アドテック東京 2017が10月17日と18日の2日間で開催されました。出展ブースや1日目のカンファレンス内容は下記より見てみてください。

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今回は2日目のカンファレンス内容を紹介します。

【サステイナブルなブランドを育み、ブランドを育む人を育てるために(Keynote4)】

■登壇者:Office WaDa 和田 浩子氏

和田氏は日本人で初めて、アメリカのプロクター・アンド・ギャンブル社(以下P&G)のヴァイス・プレジデントになり、現在の日本を代表するマーケターを育ててきた人です。その和田氏からマーケティングとマーケターを育てる方法について伺いました。

■ブランドと人材育成

マザーグースの歌に「The house that Jack built」というものがあります。
「This is the house that Jack built.」から始まり、「This is the malt That lay in the house that Jack built.  This is the rat, That ate the malt That lay in the house that Jack built.」と歌詞を重ねていく歌です。ブランドも同じことが言えると思います。HouseはブランドでJackは人です。ブランドは、それを作る人がいないと成り立ちません。
ブランドマネジメントはP&Gが発明したものだといわれていますが、これはあくまでも手法であり、それを実行する人がいないと成り立たず、人材育成が重要です。
なぜP&Gが180年間も潰れなかったのかというと、会社が直面する問題に対して解決する人がいたからです。危機に陥っても、解決できる人がいるから、会社は潰れないのです。

■ブランドマネジメントとは

ブランドマネージャーの業務範囲は「ブランドを育成する仕組み」「ブランドごとの売上、利益の責任」など全ての分野の戦略・立案です。利益の責任は営業ではなく、ブランドマネージャーにあると考えています。営業担当が追っている売上は、商品が倉庫に入るまでです。消費者に直接訴えかけるのはマーケティング担当の仕事です。

■マーケティングの最初の一歩

マーケティングで大切なことはエンドユーザーを理解すること、次に自社、他社を理解することです。根幹はエンドユーザーの理解です。マーケティングが成功すると、人々の生活を変えることになります。すると今度は生活が変わったエンドユーザーの理解が必要になります。そうして常にエンドユーザーを理解し続けることが大切なのです。他のブランドを使っているユーザーを自分のブランドに来てもらう、ブランドを変えるに値する価値を提供する、需要の創造が必要です。

■Q&A

Q:人を選ぶ基準は何か?
A:会社のDNAに合って、風や色を感じる人を選びます。なので書類だけでなく、直接人に会わないと分かりません。集団面接でも良いので、人と直接会える環境を持つことが大切だと考えています。

Q:デジタルの広告をどう考えているか
A:システムを頭から理解して、並列に扱うことが大切です。戦略のフィルタを通して見るので、デジタルかどうかは関係ないです。

【PRの視点からマス、デジタルの広告を考える(B-6カンファレンス)】

■登壇者
株式会社NewsTV 杉浦 健太氏
資生堂ジャパン株式会社 音部 大輔氏
近畿日本鉄道株式会社 能川 一太氏
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 竹内 早穂子氏

■なぜアドテックでPRのセッションを実施するのか

オンライン広告やSNSが普及していく中で、情報の作り方や流通の仕方が変わってきています。自社の商品にどういうニュース性を付けるか、どういう情報の付加価値を付けてコミュニケーションしていくかといった、PRの視点を持ったコミュニケーションの方法について聞いてきました。

■「PR」の位置づけ「広告」との役割、有り方の違い

能川氏:PRと広告を分けて考えていること自体、古い考え方だと思います。担当領域は曖昧になってきており、特にSNSは分けることが非常に困難です。
広告とPRが連携した事例を紹介します。「しまかぜ」という特急列車の発表時はまず広報部で現物が無い状態で、パースやスペックの情報でリリースと記者会見を行いました。ニュースに取り上げられることで、認知と信頼性を得ました。その後、車両ができたタイミングで、宣伝部主催で一般の方を呼んだ試乗会を数十回実施しました。TV、新聞で取り上げられ、さらに一般の方のSNSなどでも拡散してもらいました。
発表に合わせて「おかげさまを伝えよう」キャンペーンというものも実施しました。
近畿日本鉄道は、伊勢神宮や志摩観光ホテルなどの近くを走っています。伊勢神宮はお願い事をする場所ではなく、感謝を伝える場所なので、その啓蒙も含め大切な人に手紙を書いてもらい、その手紙を、志摩観光ホテルに泊まって、食事の時にサプライズで渡すというものです。この時は新聞広告と交通広告を出稿しました。手紙を書くというのはハードルが高いので、当初は応募が集まらないのではないかという懸念もあったのですが、結果的に600組から応募がありました。このように宣伝とPRの境界の無いような取り組みを行っています。

竹内氏:まずはこちらの事例をご覧ください。

■Digitalized Worldさらなるデジタル化へ

こちらはローマ法王の即位式の様子を2005年と2013年で比較したものです。
2005年がいわゆるPRの姿です。報道陣を呼び、そこに来た人が写真やメモを取り、彼らの媒体で情報発信していきます。2013年は多くの人がスマホを持ち撮影しています。今は簡単に情報発信が可能になっており、皆さんがジャーナリストになれる時代です。

私はコンタクトレンズのアキュビューを担当しています。コンタクトレンズは関与度が低い商材であり、1日の中でコンタクトレンズについて考えている時間は少ないです。なので、目が見えないことがどれだけ体験を妨げ、困るか理解してもらうことが必要です。
そしてそのインサイトをどんなメッセージで伝えればよいのか考えた時に、機能性(広告)とエンゲージメント(PR)を高めるものとして考えたのが、こちらの動画です。
まずは機能性に考慮した広告用の動画です。

竹内氏:機能性訴求なので、使うことによって解決できることを端的に伝えています。
次にエンゲージメントを考慮したPR用の動画です。

竹内氏:広告ではないので、強制的に見てもらうものではなく、ウェブ上で能動的に見てもらうものなのですが、完全視聴で1,720万回ほど見てもらいました。エンゲージメント訴求に振り切るために、本来コンタクトレンズのシーンは入れたくなかったのですが、何の動画かわからなくなるので入れています。視力が良くなることで、自分の日常がちょっと良くなることが伝わっていればと思います。

■PR視点から得られるもの

音部氏:広告は無理やり見せても意味がありません。「6秒見てもらえたから良い」ということではなく、広告によって意識が変わったかが重要なのではないでしょうか。例えばですが、鉄道会社の広告はさほどスキップされることは無いと思います。それは旅行嫌いな人はほとんどいないこと、鉄道という物ではなく、体験価値に変えて訴求しているので、強いのではないでしょうか。そして今、体験は一人ではなく、人と共有したり、ソーシャルで配信した時の承認欲求を満たすものにもなっています。

■昨今のデジタル環境下の中で変わってきたこと

竹内氏:自分事化がキーワードになっていくと思います。エンゲージメントが計測できるようになったので、消費者が求めていることが何なのかについて、より深堀りしていく必要があるのではないでしょうか。
音部氏:刺激を受けて興味を持つのではなく、興味対象の周りのものに興味を持つのだと考えています。検索により、自分事化している部分に合わせていくという施策がやりやすくなりました。今まで以上にユーザー目線にならなくてはなりません。

【ツール活用がWEB接客にあらず!本物のWEB接客とは?(B-7カンファレンス)】

■登壇者
株式会社メガネスーパー 川添 隆氏
株式会社アダストリア 田中 順一氏
株式会社ビームス 矢嶋 正明氏
株式会社パルコ 林 直孝氏

ウェブ接客についてのツールは様々出ています。レコメンドエンジン、マーケティングオートメーションやチャットbotなどのツールの台頭により、ウェブ接客という概念が生まれましたが、そのツールを使うだけでウェブ接客を行っていると言えるのでしょうか。今回はデジタルを活用した接客について伺ってきました。

■ウェブ接客は何を考えて実施しているか

林氏:パルコも4年ほど前からウェブ接客という言葉を使い始めました。インターネットなどの「テクノロジーを使い、接客を拡張する」という定義でウェブ接客を進めています。最初はブログを使ってウェブで接客をしていました。ブログを使うことで、地域や時間を問わず接客できるので、ブランドロイヤリティを作るうえで大切と判断し、開始しました。
矢嶋氏:ビームスではウェブ接客という言葉は最近でてきました。まず対面接客がベースにあるのは間違いないですが、オンライン接客ももう一つの軸として考えています。現状接客ツールは導入しているのですが、いかにうまくミックスさせて使うかが重要だと考えています。
田中氏:アダストリアもリアルの店舗中心です。ロイヤリティをいかに高めるかはブランドのことを考えて、オンライン上でどういった情報を伝え、どういったコミュニケーションをとれば良いかは、差別化を図って考えていきたいと考えています。アダストリアでもウェブ接客やオンライン接客の話は出ますが、ツール中心の話が多いのが現状です。最近ウェブ接客ツールを一回停止し、店頭のスタッフを使ったオンライン接客について改めて考えているところです。

■ウェブ接客での取り組み内容を教えてください

林氏:「テクノロジーで接客を拡張する」というコンセプトで、段階的に行っていることがあります。

■Web接客 X.0

林氏:店頭のスタッフの接客をウェブでもできるようにしています。24時間いつでもどこでも接客を受けることができるものを「24時間パルコ」という言葉を使って呼んでいます。これがウェブ接客1.0です。次に店頭回りのデータを使ったほうが、もっと良い接客ができるのではないかと考えて、IoTを使っています。カメラやWifi、GPS、気象センサーなどのデータを使って、もっと接客しやすいデータを作っています。これがウェブ接客2.0です。今年になって進めているのが、商品のデータ管理です。どのショップに何が何点あるかはテナント側では把握していないことがほとんどです。しかしこれは接客の中で必ず必要なデータだと考え、データ連携を進めています。また10月16日週からロボットの接客をテスト的に行っています。これがウェブ接客3.0です。さらに先ですが、将来的には体験のデジタル化ということで、VR・ARというリアルとウェブの間のものを使いたいと考えています。ここまでくると、ウェブ接客4.0と言えるのではないでしょうか。
田中氏:現在クローズしているのですが、3年前に「Q&A Community」というオンラインで問合せができるサービスを展開しました。EC上での問合せに対し、スタッフが答えていくというものです。これは失敗だったのですが、今なら学べることがあります。理想としては月間8万件程の問合せを見越しており、コミュニティを作っていく予定でしたが、そこには至りませんでした。当時はメールで来たものをメールで返していたので、3日弱のタイムラグがあり、それが原因で離脱率の高さと、リピートにつながらず、ダメになってしまったのではないかと考えています。今だったらプッシュ通知やデータの可視化など、できることは多いのではないかと考えています。ECの数値を追っている側からすると、問合せ件数に対し、「少ない」という判断で終わってしまいました。どれだけEC上の定性的なベネフィットにつながったのかということも考えていかないといけないと思います。
矢嶋氏:ビームスは現在日本中で100数十店舗あり、世界中から商品を仕入れてきて販売するセレクトショップという形態です。強みは販売員と商品力なのですが、ドメインがレーベルごとに異なっており、管理が統合されていませんでした。デジタルの情報を再構築するため、4,5年前から乱立していた自社ドメインを集約、オウンドメディアの一元化、デジタルマーケティングのためのプラットフォームの構築を行いました。

■情報の統合

田中氏:ビームスはウェブでスタッフがメインで出ていますが、データの評価やフィードバックはどうしていますか
矢嶋氏:今は1,162人がウェブ接客しています。「スタイリング」「フォトログ」など大きいカテゴリに分けてコンテンツアップしてもらっています。非常に大変ですが、表現としてよくないものは裏でチェックしています。ビームスは個性的なスタッフが日本全国にいます。なので、それをオンラインを通じて接点を拡大させたいと思っています。

■マーケティングオートメーションの使い方とは

矢嶋氏:来るお客様は大きく分けると2種類しかなく、新規かリピートのどちらかです。リピートの中では関係の長さも重要になってきます。その時にどういった情報を出し分けるかが大切で、お客様に合ったものを出すために、ツールを使っています。

■どのようにウェブ接客を売上利益につなげているか。またKPIを設定しているか

林氏:ウェブでの施策についても、全て店舗のショップの売上になるようになっています。ウェブを使って売上を上げれば、店舗の成績があがり、パルコも歩合で収入があるので、Win-Winの関係になっています。現状売上1位の企業は、売上の26%をウェブ経由で作っています。またオンラインの売上の4割は営業時間外であることから、店舗の売上を食い合っているのではなく、拡張が進んでいると捉えています。

矢嶋氏:販売員の1投稿、1記事に対して、どの程度直接、間接CV、売上に至ったかを見ています。
田中氏:会員か会員ではないかは重要だと考えています。会員の方が売上は高いです。またECと店舗両方使っている人の方がロイヤリティは高いです。
矢嶋氏:販売員経由の方が売上やリピートは高いです。動画やイメージコンテンツを見た人やスタッフのコーディネートを見た人の方がCVRは明らかに高いです。サイト内で全スタッフのコーディネート見切れませんが、お気に入りのスタッフをフォローすることができます。そこでパーソナライズができるようになっており、そこからのCVRは非常に高いです。

【総括】

テクノロジーの進化により、広告とPR、オンラインとオフラインなどの境界線は、より一層曖昧になってきています。しかし、今回のカンファレンスを通して、各社どんなにテクノロジーが進化しても、人を中心に考えているということは変わりません。ついついインターネット広告は新しい手法に目がいってしまいます。都度立ち返り、人を中心としたマーケティングについて見直す必要があるのではないでしょうか。

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ライター:椛島 健太


メディアマーケティング本部メディアグループ所属。
インターネット広告のコンサルティング業務、媒体社での営業経験を積み、2016年にGMO NIKKOへ入社。
運用者視点、媒体社視点を持ち、サービスの見極めを行う。

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