人とテクノロジーの共存(Vol.1)

2017/6/26

みなさんこんにちは。アド論編集部の冨岡です。

今回から3カ月ほどかけて「人(運用型広告コンサルタント)とテクノロジーの共存」についてGMO NIKKOでのプロジェクト(PJT)をもとに連載していきます。

現在、このPJTではブレインパッド社(BP)とGMOインターネット次世代研究室(次研)、GMO NIKKO(NK)との三社協働研究を実施しています。

ブレインパッド社(BP)は、運用型広告最適化ツール「L2Mixer」を提供するなど、データ活用・分析企業として実績豊富なパートナーです。

●三社協働研究PJTの背景について

現在、Googleを始めとするテクノロジー企業では、CO(Conversion Optimizer)等、広告運用の自動化が進んでいます。この状況の中で、人は「テクノロジーと戦う」のでなく「共存する」を一つの方針として取り組みに力を入れています。このPJTのゴールは、広告費の最適な投資配分を導きだすモデルを作ることです。

NKには多くのクライアントの広告実績が蓄積されているDB(MARS Analytics)があります。この膨大なデータを活用してコンサルタントの運用を支援する広告予算最適配分モデルを作ります。すでにGoogle等、そのメディア内での予算配分モデルはあります。しかし、コンサルタントの思考に沿った複数媒体(広告メニュー)間での予算配分モデルでメジャーなものはありません。

今回、BPと次研、NKのデータサイエンティスト、エンジニア、コンサルタントと、以下条件下でモデル開発に取り組みました。

●条件設定について

インプレッション(IMP)、クリック(CL)、コンバージョン(CV)、コスト(COST)の基本指標のみを使い媒体間の最適予算配分を導き出し広告投資対効果を向上させるモデル作成を行います。これは、あくまでコンサルタントの支援であり、属人化しやすい入札や予算管理業務の精度を組織全体で上げることが目的です。

●協働研究の内容

<利用した実績データ>

MARS Analytics から抽出したIMP、CL、CV、COSTの日別の集計値を以下の組み合わせの粒度で集計しました。

・案件(企業とアカウントの中間の粒度)別
・媒体別
・広告メニュー区分(ディスプレイ_リマケ、ディスプレイ_リマケ以外、検索_一般、検索_ブランド)別
・デバイス別

実績データは、その時々で実際に発生したCOSTに対してどれだけのIMP、CL、CVが獲得できたのかがわかるので、仮にCOSTとIMP、CL、CVの関係性に何かしらの法則が見つかれば、どれくらいの予算を積んでおけばどれだけの結果が得られそうかが予測できるのではないか?と考えました。

媒体ごとに法則性の違いがあれば、どの媒体にどれくらい予算を積んでおくと獲得CVが最大になるのかを予測して、最適な予算配分を導き出すことができます。あくまでも過去の実績データに従って予測をおこなうので、現実的にありえないような予算を機械的に算出してしまう危険性が小さく、これまでのコンサルタントの運用方針に沿った無理のない予算計画をおこないながら属人化を解消した予算配分業務の精度向上が期待できます。

 

<モデル作成の検討>

予算配分のシミュレーションを行うには、COSTとIMPなどの各指標を「モデル」と呼ばれる何かしらの数式で表現する必要があります。今回のプロジェクトでは、汎用性の高いモデルを作成するために、いくつかの業種カテゴリの実績データでモデルを作成することで、様々な業種カテゴリや媒体に対応可能なモデルを検討しました。

<テスト案件の条件>

MARS Analyticsのすべての企業やアカウントを対象にモデルを作成するのは工数上難しいため、いくつかの案件をテスト案件として選定することにしました。テスト案件の選定においては以下の条件で選定しています。

・過去実績データが存在する日数が多く存在する
・過去実績期間全体の投下コストの総額が大きい
・1日あたりの投下コストの金額の幅がある
・広告メニュー区分の種類が多く存在する (予算配分対象が多い)

<テスト案件の選定における基礎集計>

集計作業は、以下のステップで実施しました。

・アカウント単位
・キャンペーン単位
・案件単位(予算配分の実際の運用の粒度に合わせたまとまり)

基礎集計における主なポイントは以下が挙げられます。

◆ データが存在する日数の集計

ほぼ全ての広告メニュー区分、媒体について、直近過去2年間のうち、ほぼ毎日データがある案件

※モデルの精度検証を行う時期を任意に設定できるよう、モデル作成に使用するデータを直近の過去2年分としました。

表1は、直近2年間のうち、データが存在する日数を案件別に集計した結果です。案件A、B、Cなどのように、多くの広告メニュー区分、媒体について、直近過去2年間のうち、ほぼ毎日データがある案件が存在しました。
※一部の案件の結果のみ掲載しています。

◆ 直近の過去2年間の総コストの集計

様々な広告メニュー区分の種類があり、かつ、総コストが大きい案件

図1は、直近2年間分の総コストを案件別に集計した結果です。案件A、B、Cなどのように、広告メニューの種類が多く、2年間の総コストが比較的大きい案件が存在していました。

◆ 1日あたりのコストの幅

広告メニュー区分ごとに、1日あたりの投下コストの幅がある案件

図2は、ある1つの案件の直近2年間分の各日のコストの分布を、媒体、広告メニュー別にプロットしたグラフです。どの広告メニューも、その広告メニューの中で、コストが最も大きな日と小さな日との間に、様々な金額のコストを投下した日が存在しており、1日あたりのコストの幅があることを確認しました。
※全案件の結果を表示すると膨大な量となるため、1つの案件の結果のみ掲載しています。

このように、モデル作成で考慮する「配分する媒体の種類の豊富さ」と「過去実績の多さ(実績のある日数や一日に発生したコストの金額幅)」に着目して基礎集計を実施しました。

結果、多くの業種カテゴリで2年以上に渡って実績データが蓄積されており、MARS Analyticsにはモデル作成の検証に用いるのに十分なデータが揃っていたといえます。

<テスト案件の決定>

基礎集計の結果から、選定条件を満たすいくつかのテスト案件候補をピックアップしました。

その後、実際に運用されているコンサルタントの方々との議論を重ね、「季節性が異なる業種カテゴリ」や「予算配分の最適化によって得られるインパクト」なども考慮し、最終的に予算規模が大きい3つの業界から各業界で1案件ずつ、今回のプロジェクトのテスト案件として選出しました。

テスト案件として選出された案件の業種カテゴリはこの3つです。

「旅行」「通信販売」「エンタメ」

– 次回はモデルによって予測した結果と予算配分について説明します。

●今後の連載について

こちらの記事は今日から5本の連載としてお送りしていきます。

1回目:概要、出稿データ例
2回目:作ったモデルの紹介
3回目:モデルを使っているコンサルVS使っていないコンサルで戦ってみました①
4回目:モデルを使っているコンサルVS使っていないコンサルで戦ってみました②
5回目:テクノロジーの広告活用の未来についての対談(BP、次研、NK)

photo

ライター:冨岡 信之


アド論 byGMO 編集長
2006年大学卒業後、日広(現GMO NIKKO株式会社)に入社。入社から広告営業でリスティング広告やバナー広告、またキャンペーン、リアルメディア等を企業へ提供。Advertising Innovationを掲げ、「広告貢献度の可視化」をクライアントへの付加価値とし、企業の広告領域の価値を高めることに取り組んできた。現在はデジタルマーケティング本部の本部長として、企業の広告価値を高める根幹を担っている。

Contents

ico人気記事